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「まあだだよ」黒澤明監督

 日本映画の巨匠、黒澤明監督最後の作品。

 昭和18年、東京。ひとりの初老の教授(松村達雄)が大学を去ろうとしていた。それでも教え子たちは師を慕って集まってくる。中年になった教え子が、小さな子どものように師のもとに集まってくる。一方でこの教授も、ちょっと世間離れしているところなど、教え子たちも放って置けないところがあるのだろう師の家が空襲で焼け出されれば、代わりの住居を教え子たちが探してくる。師の飼い猫がいなくなれば、教え子たちが探しに行く。人と人とのかかわりが希薄になっている現代では、ちょっと奇異に見える部分もあるかもしれない(そのためか、この作品については賛否が非常に分かれているようだ)。しかし、そんな時代だからこそこの映画が訴えかけるものがあるのかもしれない。それは、深いところでの人と人との心のつながり。私たちが置き去りにしてしまったものがここにはあると思う。

 この教授のモデルは、内田百閒(1889~1971)。岡山県出身、小説家、随筆家。この作品にもあるように、ユーモアにあふれた文章を書く人で、「阿房列車」は、後の紀行作家たちに強い影響を与えた。私自身、数年前に読んでで、その面白さにひきつけられたことを覚えている。この人の影響を強く受けた紀行作家が宮脇俊三(1926~2003)で、私は中学生以来愛読し続けている作家である。

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コメント

検索で貴記事を発見!拝読させて頂きました。

黒澤様は最後まで巨匠でありました。
評判の良くない作品だけど、私も大好きです。

ということで、是非、私の記事、TBさせてくらさい。
(ブログの趣旨にそぐわないと判断された場合には、遠慮無く削除して下さいませ)

 はじめまして、カゴメさん。
 トラックバックどうぞ。カゴメさんのブログもゆっくり呼んでみたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

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「まあだだよ」 (1993) 日本 監督:黒澤明製作:黒澤久雄  原作:内田百輭脚本:黒澤明撮影:斎藤孝雄 上田正治  美術:村木与四郎  編集:黒澤明音楽:池辺晋一郎  出演:松村達雄  香川京子 井川比佐志所ジョージ 油井昌由樹 ...... [続きを読む]

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