美麗之島~台湾紀行 その2
【12月29日 台北まで】
成田空港第1ターミナル、キャセイパシフィック航空のカウンターには長い列ができていた。今日は日本から海外へ出国する人のピークの日だという。私と相棒はすぐに並ぶことは諦めて、展望デッキに行って離着陸する飛行機を眺めていた。テレビやネットや本の中でしか見たことのない国の飛行機が行き来している。社会科の教員として非常に恥ずべきことなのだが、世界の中の日本って、今ひとつ実感できずにいたから、とても新鮮なことだ。
離陸までの時間が迫り、チェックインカウンターに行く。まだ列は短くならないがやむをえない。30分近く待たされてチェックインを済ませると、出国審査、私の真新しいパスポートに日本出国のスタンプが押された。初めての海外旅行なので、どんなことを調べられるのかと思ったら、手荷物をちょっと見るだけで簡単にパスできた。
15時40分、キャセイパシフィック航空451便は成田空港を離陸した。北へ向かって離陸するとすぐに南へと向きを買え、東京湾、横浜上空と進む。富士山の噴火口を上から見上げる。国内線は富士山を横から見ることになるので、初めての経験だ。憧れの女性の裸をいきなり見てしまったような、不思議な気持ちになる。
南アルプスの山々が白く輝いて神々しい。伊勢湾から淡路島、四国山地と、飛行機の小さな窓の外に流れる景色は美しく、楽しいものだ。一方相棒は座席モニターに流れる映画に見入っている。こいつは時々カチンと来ることを言うが、気を遣わなくていいから、一緒に旅行するのは楽だ、こちらがしばらくふくれていればまるく収まるのだから。高知県の宿毛上空だろうか、気流が悪くなった影響でしばらく揺れた。宮崎県の上空になったはずだが、雲が厚く下界が見渡せない。身のぱさついた魚の機内食を食べるとすることがない、映画も途中からでは面白くない。窓の外を見ると、夕焼けが雲を茜色に染めている。飛行機は西へ進んでいるから、夕焼けはなかなか没しない。「きれいだな」、ひとりでつぶやいてみた。
飛行機は降下を始めた。主翼の照明が雨粒を照らし出している。そして、明かりの少ない台北中正機場に着陸した。はじめての台湾は雨がしとしとと降っていた。 飛行機のドアが開き、いよいよ台湾の空気を吸う。暖かく、湿った空気だ。私は大きく息をした。なんとなくスパイスの香りがした。
中正機場は、殺風景だ。入国管理の職員も表情が固まっているように見えた。そう見えたのは、初めての海外で私が緊張しているからだろうか。
大分待たされて荷物を受け取る。台北市内行きのバスは数社が競合しているようだ。私たちがまごついていると、台湾の方と思われる女性が英語で話しかけて、バス乗り場を教えてくれた。「謝謝!」と中国語でお礼を言うとにっこりしてくれた。私の緊張もこれですこしほぐれた。
台北行きのバスは、日本なら田舎バスでしか見ないような古いバスだった。空港を出てしばらく一般道を走る。日本では見ないような看板が並んでいる。よく見ると日本企業の看板も多い。バスは高速道路を走る。やっと気がついたが、台湾では右側通行だ。
淡水河にかかる長い橋を渡ると台北市だ。新しい建物が多い。車は予想以上に日本車が多かった。もう夜8時近いが台北の町はまだまだ活気にあふれていた。
私たちは台北駅の近くでバスを降り、近くの安宿に泊まった。飛び込みだがツインの部屋が空いていた。日本ならまともなホテルには泊まれない値段だが、狭いもののそこそこきれいな部屋で、バスルームも許容範囲内の清潔さだった。
« 3学期のスタート | トップページ | あなたの日本語大丈夫? »
「旅行・地域」カテゴリの記事
- 海軍カレーと走水の黄金鯵(2024.11.17)
- 横須賀線、京浜急行、魅力対決(2024.11.16)
- 知的好奇心の大切さ (2024.11.04)
- いわき駅前公園化計画(2024.10.19)
- 小名浜慕情(2024.10.06)
こんばんは、やえもん様。
私は海外旅行って、行った事がないんですよ。度胸が無いんですよね~。だから、日本と違う文化の空気を吸う、と言うだけで羨ましいなと思って読んでいます。
この後の紀行も楽しみにしています。
投稿: 橘みかん | 2006.01.11 22:51
みかん様今年もよろしくお願いします。
私も今回が始めての海外でした。いろいろな発見があってとても面白かったです。同時に日本のすばらしさも良くわかりました。少しずつではありますが、旅行記を書いていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
投稿: やえもん | 2006.01.14 11:21