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雨と風と虹~山形紀行 ②

【芭蕉とおしんと最上川 10月7日】

 10月7日(土)、午前6時、雨はまだ降り続き、風も強かった。幸い高速道路は閉鎖にならず、山形方面へも仙台方面へも車が流れていた。着替えを済ませ、昨日買ってきたパンと、缶コーヒーで手早く朝食を済ませる。今日の予定ははっきりしていない。唯一決まっているのは、今夜は山形駅近くのホテルに泊まることだけである。ガイドブックを見て行き先を考える。もし晴れていれば月山方面にいこうと思っていたが、この雨ではどうしようもない、ガイドブックを端から端まで見て、行き先を銀山温泉を軸に尾花沢市、大石田町にすることに決めた。

 出発してまもなく笹谷トンネルを通る。ここは奥羽山脈を越える長いトンネルで、トンネルを抜けると山形県になる。トンネルを抜けてすぐの関沢インターから、次の山形蔵王インターまでは高速道路が通行止めだったので、国道286号線を走る。国道も1箇所小規模ながけ崩れが起きていた。山形蔵王インターのランプウエィでは追突事故がおきていた。雨で視界が悪いし、路面も滑りやすい、通行止めで国道を走ったため、時間が遅れて気があせっているドライバーも多いだろう。慎重に走らないと。
 馬見ヶ崎川が作る扇状地の上にある山形市街地を見下ろしながら走る。山形市の市街地の北にある山形ジャンクションから東北中央道に入る。風をさえぎるもののない田んぼの中を走る。風が強くなってきた、幸い交通量が少ないので、制限速度程度で走っても他のクルマに迷惑がかからない。これ幸いに慎重に走る。東根インターで東北中央道を下り、国道13号線を北に進む。コンビニで飲み物を買う。店員のお姉さんに尾花沢までどのくらいかかるか聞いてみたら、およそ40分だと言う。今は8時少し過ぎ、尾花沢の芭蕉・清風歴史資料館の開館時間は9時、ちょうどいいタイミングでつきそうだ。
 山形というと果物のイメージが強いと思うが、国道13号線沿いは平地のせいか水田が多い。村山市を抜けて、コンビニのお姉さんの言うとおり、およそ40分で尾花沢の市街地に入った。歴史資料館までたどり着くのに、市街地をしばらく走り回ったので、たどりついたのは9時ちょうどだった。

 元禄2年(1689年)5月16日、江戸の深川を出発した松雄芭蕉は、日光、白河、仙台、松島、平泉を経て尾花沢に7月3日から13日まで滞在した。鳴子・尿前からの峠越えで疲れた身体を癒す目的もあったのだろう。当時芭蕉は45歳、当時はすでに初老と言ってよい年齢である。しかし、それだけではなかったようだ。尾花沢の豪商、鈴木清風を訪ねるという目的もあったようだ。清風は、江戸に滞在したとき、俳句を通じて芭蕉とつながりがあったようだ。清風の玲だけではなく、芭蕉はこのたびの途中で各地で俳句の仲間を訪問している。
 この資料館の建物は、かつての商家を利用したものだそうだが、ずいぶん立派なものである。柱や梁の太さと言ったら。尾花沢が、銀山や、羽州街道の宿場町として栄えたことをしのばせるものがたくさんあった。この町を歩いてみたいが、あいにく雨が降り続いている。残念だが先へ進む。
 尾花沢から東へ、銀山温泉へクルマを走らせる。道端にはスイカの販売所があった。とっくにスイカの季節は終わったはずだが、店はそのままになっているようだ、のどかなものである。道端に、案山子が4体立っていた。ふつう案山子は1対だけ立っていることが多い。なんだか、案山子の家族みたいに見えて面白い。クルマを止めて写真を撮った。

 銀山温泉は、温泉街の手前に駐車場を作って、温泉街には歩いてはいるようになっている。昔ながらの景観を守るための取り組みなのだろう。雨が降っているので、少々面倒な気もするが、景観を守るためには大変よい取り組みだと思う。まず、一番手近なところにある旅館に入ってみる。フロントにいる女性に日帰り入浴の料金を聞こうと思ったら、びっくりした。あまりにも旧友にそっくりなのである。もし、仙台や東京で会っていたら見分けがつかなかっただろう。広い浴場は、私一人だけでであった。硫黄の香りのするお湯に使っていると、昨日の疲れが出たのか、少し眠くなってきた。
 雨が小降りになってきたので、銀山温泉の温泉街を歩く。小川に沿って両側に木造の旅館が並んでいる。今では珍しくなった木造3階建てである。この景観に車は似合わない。「おしんこけし」という看板を掲げた土産物屋さんがある。懐かしい!「おしん」は1983~84年にNHKで放送されたテレビドラマで、貧しさや苦難に耐えて生きた女性の一代記である。日本国内で平均視聴率50パーセントを越える怪物番組になっただけにとどまらず、アジア圏の各国で熱狂的な人気が出た。当時小学生であった私は今ひとつ良くわからなかったが、世代が近い祖父母が熱心に見ていたのをよく覚えている。そういえばおしんの出身地は山形県と言う設定だった。
 銀山温泉の奥には、鉱山の排水溝後のトンネルがある。かつては日本有数の銀山だったそうだ。さらに奥に進むと滝がある。降り続く雨で滝は濁流となっていた。危険を感じ、滝の上までは進めなかった。おなかがすいてきたので、温泉街の蕎麦屋さんで昼食にする。しっかりとしたコシのある蕎麦と、香りのよいきのこのてんぷらが美味しかった。

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