« 少しの贅沢 | トップページ | きのうガーベラが(BlogPet) »

村上の城下町と笹川流れ(下)

 私が高校生の頃、私と弟2人でよく旅に出た。いや、一般的には旅とよべるものではないかもしれない。学校の長期休業期間に合わせて発売される「青春18きっぷ」を使ってひたすら鉄道に乗り続けるものなのだから。私達兄弟は費用を節約するために夜は東東海道本線の京~大垣間(岐阜県)を走る「大垣夜行」や中央本線の新宿~上諏訪(長野県)を走る「山岳夜行」(南アルプスや八ヶ岳に登る登山者によく利用されたからこのような名前がついた)の狭いボックスシートで一夜を明かした。当時は若かったからさほどつらいと思ったことは無い。それよりも、松本、長野、金沢、福井、名古屋、静岡・・・地図の中でしか存在を確かめることのできなかった町の景色を見ることができたのが何よりも楽しかった。霧にかすむ木曾谷、深夜の東名高速道路を走るトラックの列、雪をかぶった八ヶ岳の美しさ、はじめて見た日本海、10代の私たちにとって旅の原点とも言えるものだった。
 高校2年の冬、私達は新宿から快速「ムーンライト」に乗った。23時の新宿はまだ人通りが多く活気にあふれていた。田舎育ちの少年であった私たちにとって都会の明かりはまぶしかった。目を覚ますといつのまにか越後湯沢(新潟県)だった。線路の周りには深く雪が積もっていた。私は寝息を立てている弟を起こさないようにそっと席を立ってデッキに出て、ドアの窓ガラスに顔を押し付けた。東北生まれとはいえ、雪の少ない町に生まれた私にとってはじめての豪雪地帯の風景、私はしばらくの間雪景色に見とれていた。新潟を過ぎ、終点村上で羽越本線の普通列車に乗り換える。間もなく、左手に荒れ狂う冬の日本海と、断崖と小島が連続する荒々しい風景が見えてきた、これが笹川流れ、私達はその圧倒的な風景に言葉を失った。

 それから20年近い歳月が流れた。私はもう一度笹川流れを見たくなった。こんどは穏やかな季節の日本海に沈む夕日を見てみたいと思った。村上の市街地を出て、国道345号線を北に進む。まもなく荒涼とした海岸線が見えてくる。山と海の間のわずかな平地に、家と国道と羽越本線の線路が貼り付いている。村上から30分ほどで桑川という小さな集落がある。ここに羽越本線桑川駅と道の駅を統合した施設がある。

Photo_52

 ここでしばらく休憩をするといよいよ笹川流れに入る。山が直接海に落ち込んでいる、トンネルと小さな入り江、沖合いに小島が点在するようになる。20年前の荒々しい景色と、穏やかな季節の景色ではだいぶ印象が違う。どちらがいいとは断言できないけど、私にとっては荒々しい季節の印象があまりにも強かった。沖合いに粟島を見ることができる小さな入り江にクルマを止めることできるスペースがあった。今朝は早起きしたから疲れている。夕陽を見ることが時間までは3時間以上がある。しばらく仮眠をとることにする。今は薄ぐもりだが何とか晴れてくれないだろうか。
 18時少し前に目が覚めた。まだ薄ぐもりだ、日本海に落ちる夕陽を見るのは絶望的になった。それでも時間ぎりぎりまで粘ってみることにする。18時半、少し空が暗くなってきた、19時ほぼ完全に暗くなった、結局夕陽は幻になった。それでも落ち込む必要は無い、元気でいればまた来る機会がある。今日は村上で日本海の網の幸でも味わって帰ることにしよう。ETCの深夜割引を使いたいから、福島に着くのは明日の0時過ぎでいい。時間はたっぷりある。(終)

« 少しの贅沢 | トップページ | きのうガーベラが(BlogPet) »

コメント

今考えると、あれだけ時間のあった学生時代に旅をしておけばよかったと後悔します。
やえもんさんは高校生のころから旅されてたんですね。
今はETCを利用して車で旅行。
なんだか読んでいて時の流れを感じました。

 私の旅好きの血は祖父譲りなのだと思います。旅を始めるより前、中学生の頃から紀行文を読むことがとても好きでした。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 村上の城下町と笹川流れ(下):

» ETCの深夜割引 [ETCカードの比較・申込みならクレジットガイド!]
東/中/西日本高速道路株式会社が管理する全国の高速自動車国道(以下「高速国道」という。)。※ 高速国道以外の有料道路(一般有料道路、本州四国連絡高速道路株式会社が管理する道路、都市高速道路(首都高速道路や阪神高速道路など)、地方道路公社が管理する道路など)は割引対象外。 次の2つの条件を両方満たす車両がETC深夜割引の対象車両となります。(1)ETCが整備されている入口料金所をETC無線通信により走行 。(2)午前0時から午前4時までに東/中/西日本高速道路株式会社の管理する�... [続きを読む]

« 少しの贅沢 | トップページ | きのうガーベラが(BlogPet) »

フォト
無料ブログはココログ

ウェブページ