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12年目の北海道②

【2 北の大地、再び 7月31日】

午前4時20分過ぎ目が覚める。寝台車のカーテンを開けて、外を眺めてみる。広々とした田んぼが広がっている。通路に出て車窓を見てみると、通過する駅の駅名票が「中沢」と読めた。定時ならとっくに北海道に入っている時間だが、まだ青森を過ぎたばかりだ。もう一度寝台車で一眠りし、6時20分ごろ、人の話し声で目が覚める。遅れはどのくらいか車掌に尋ねているようだ。既に遅れは1時間半ちかい、やっと函館の手前のようだ。できれば12年前と同じように北海道上陸の瞬間の喜びを味わってみたかったが、やもうえない。
 着替えと洗面を済ませ、ロビーカーに行く。函館を過ぎると、まもなく大沼公園になる。大沼・小沼、ふたつの湖の間を列車は進む。静かな湖畔で、12年前の旅では、ユースホステルで知り合った大阪の大学生と一緒に自転車で一周したことを思い出した。
 霧が出てきた。その中を、列車は進んでいく。長万部から洞爺にかけての海岸線は、時に高い断崖が海岸線まで突き出していて、豪快な風景である。食堂車で朝食を食べる。パンにスクランブルエッグ、ハム、ソーセージ、サラダ、フルーツ、最後にはコーヒーもついている。列車の中で、豪快な景色を楽しみながらの朝食は贅沢な気分になる。
 列車の遅れはさらに広がって、1時間40分になる。苫小牧は久々に大きな町だ。製紙工場もあれば大きなショッピングセンターも見える。しかし、それを過ぎると、野鳥の生息地として有名なウトナイ湖の近くを走る。その後は、左手に千歳空港がちらりと見える。また牧場とトウモロコシ畑になるとまもなく札幌である。1時間40分遅れの11時25分ごろの到着だ。
札幌駅は12年前と同じように活気があった。10番線まであるホームにはひっきりなしに長距離の特急列車から札幌近郊の普通列車までたくさんの列車が発着していた。 私は、駅の中の店で冷やしラーメンの昼食を終えると、岩見沢行きの普通列車に乗って、次の駅、苗穂(なえぼ)で下車した。ここから、歩いて15分ほどで、サッポロビール博物館にたどり着けるはずである。
 苗穂駅は古びていて、小さかった。駅前に、周辺の地図でもないかと探したが、そんなものはなかった。タクシーはいるが、初日から贅沢はしたくない。詳細な地図を用意しておけばよかったが、今回はそこまでの準備はしていなかった。やむを得ずこちらだと思われる方向に歩き出す。 線路をくぐると、大きな工場が見えてきた、JR苗穂工場である。北海道の車両のメンテナンスや改造を行ってきた工場だ。珍しい車両ばかりなのでカメラを向けると、工場のおじさんが近づいてきて、あと30分も待つと「スーパー宗谷がやってくるよ」と教えてくれる。それはそれで魅力的な被写体なのだが、そんなにのんびりしていられないので礼を言って先を急ぐことにする。このことで、だいぶ遠回りをしていたことが判明した。バスでもないかと探したが、バスはついさっき出たばかりで、あと20分も待たねばならない。今日の札幌は強烈な日差しが照りつけ、かなり蒸し暑い。近くに休めるような店も見当たらない。待つのも地獄、歩くのも地獄となれば、少しでも進んだほうが気分的にはいい。結局40分ほど歩いて、やっとサッポロビール博物館にたどり着いた。
 私は飲兵衛である。とくにビールが好きだ。それだけの理由でここを選んだのではない。北海道の発展において、食品工業の果たす役割は大きかったと思う。その中で代表的な存在としてサッポロビールを選んだ。レンガ造りのビール博物館に入る。エレベータで3階に上り、ビール製造の歴史について見る。黒田清隆をはじめ、開拓史にとって、ビール製造は重要な事業だった。北海道の風土に適し、北海道で野性のホップが発見されたことも追い風であった。実際にビールの醸造に使うホップや二条大麦も見ることができる。途中には試飲のできるコーナーもあり、明治9年、創業当時のビールを再現したものも飲むことができる。無ろ過のビールは、やわらかい口当たりのビールだった。真昼にもむビールは、グラス1杯でほどよく酔いが回った。
 バスに乗り、大通公園をあるく。ここは、札幌に来るたびに歩いたところで、広々とした公園は本州ではなかなかまねのできないところだろう。前回は行くことのできなかった北大植物園に行く。広い園内は、残念ながら花に軸ではなかったが、「少年よ大志を抱け」の北大の古い校舎が園内保存されていた。暑さでだいぶ参っていたので、ゆっくり見て回ることができなかったのが残念だった。まだ午後4時だが、いったんホテルに戻ることにする。贅沢だが、ホテルまではタクシーに乗る。
 ホテルの部屋で一眠りして、午後6時、再び札幌駅に行く。駅の窓口で「ドニチカきっぷ」という切符を購入する。この切符は、土曜日・日曜日・祝日のみ札幌市営地下鉄全線が乗り放題になる。この切符を使って、札幌市営地下鉄のミニ散歩をした。まずは東豊線で、南の端の福住へ。ここは、札幌ドームが近い。大きなバスターミナルが隣接していて、ひっきりなしにバスが発着していた。ここから大通りに戻り、東西線の西の端宮の沢に行った。ここは、先ほどの福住に比べればやや古い住宅地といった雰囲気である。これで札幌市営地下鉄は全線に乗ったことになる。感心したことは、電車の内装の壁面に、時計台や道庁、ライラックの花やすずらんなど、札幌の名物が描かれていた。電車の内装は無機質なものとほぼ決まりきっている中で珍しい。
 大通り駅で降り、公園を歩く。昼間の暑いのがウソのようにさわやかな風、さすが北海道だ。狸小路に行き、しばらく店を物色しながら歩く。楽しいものだ。ここで飲んで、ラーメンを食べ、地下鉄で戻る。札幌ドームでコンサートがあったらしく、電車の中は「SMAP」のグッズを持った女性でいっぱいだった。ファンの年齢層は70代から10代とかなり広いようだ。

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