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12年目の北海道⑤

【5 さようなら、北の大地、北の大空 8月3日】

 8月3日、根室の町は濃い霧に覆われていた。朝食を済ませ、根室駅前のバスターミナルへ向かう。バスターミナルは規模が大きく、お土産店などを併設していた。納沙布岬行きのバスの時間を確認しようとしていたら、花咲岬、納沙布岬、金毘羅神社をまわる観光バスのほうが路線バスで往復するよりも安いことに気づく。
 根室駅に発車したバスは、霧の中を花咲岬へ向かう。天気さえよければ眺めはよさそうであるが、今は窓の外は真っ白だ。花咲岬は車石という昭和14年に国指定の天然記念物となった世界的にも珍しい奇岩がある。車輪を想わせるような形をした玄武岩で溶岩が水中を流れた時に この様な形になったといわれ 、直径が6mにもなる。海と車石を対比させた写真が撮れたら面白いだろうなと思う。
 バスに乗り込み、日本最東端の東根室駅をチラッと見て、根室半島を東へ進む。景色が荒涼としてきた。日本最東端の小学校、はたして何人の児童がいるのやら。納沙布岬からの展望は、今回の旅のハイライトとして、わざと最終日にもってきた。双眼鏡もここで使うために持ってきた。しかし、目の前10メートルが何とか見えるだけだ。本来なら、現在ロシアが実効支配している貝殻島や総称島が見えるはずなのだが・・・。展望はあきらめて、北方領土の資料館を見る。開拓の歴史や、千島列島の自然についての展示があった。はたして、解決はいつのことになるのだろうか?
 バスは、根室市内に戻る。根室金毘羅神社に着く。やっと霧が晴れてきた。参拝を済ませ、高田屋嘉兵衛(1769~1827)の像を見る。淡路島で生まれ、一水夫から大商人に上り詰めた嘉兵衛は、いちはやく北海道や千島列島の豊かな物産に目をつけた。北海道の歴史を開いた功労者のひとりとして、もっと知られていい人物である。現在、嘉兵衛は根室の町を見下ろしている。まるで、この町を守っているかのように。私も根室の町を見下ろしてみる。しばらく荒涼とした景色を見てきたので、ひときわ大きな町に思える。

根室発釧路行きの列車は、昨日の列車と同じくディーゼルカー1両のみだった。半分強の席が埋まり発車する。昨日見た景色を逆回しで見る。釧路から特急に乗り換える。すでに自由席のドアの前には長い行列がきていた。あっという間に自由席は満席になった、根室にいたころとは別世界に来たようだ。何とか空席を探す。走りっぷりも今までとは違う。1時間ほどで池田に着く。ここからふるさと銀河線に乗ったのはわずか2日前なのだが、10日も20日も前のことのように思える。
 しばらく眠っていた。いつのまにか新得を過ぎ、石勝線に入っていた。あと1時間強で南千歳、寝台特急「北斗星2号」に乗り換えれば、いよいよ北海道ともお別れだ。今度北海道に来られるのは何年後だろうかそれでも、また来ます。北海道の空、北海道の大地、北海道の人々、その日までさようなら。(終)

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