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大阪・京都・神戸 私の三都物語 ⑦

【7 びゅわーんと播州平野の鉄道を楽しむ(上) 12月30日】

 バイキングの朝食を早々と済ませ、午前7時前にホテルを出る。昨日までは暖かかったが、今日は肌寒い。昨日まではホテルのクローゼットに仕舞われっ放しだったコートが、今日は威力を発揮しそうだ。大阪駅から東海道線の普通列車に乗り新大阪駅に向かう。淀川を渡り、新大阪駅に着く直前に、3月のダイヤ改正で廃止になる寝台急行「銀河」とすれ違う。
 新大阪駅はたくさんの人が行き交っていた。どのホームにも新幹線を待つ人が行列を作っていた。しかし、一番端の20番線だけは閑散としていた。ここからは岡山・広島方面への「こだま」と博多方面への「ひかりレールスター」が発着する。そんな20番線から「こだま635号」が発車した。この列車は1985年に登場した東海道・山陽新幹線初のモデルチェンジ車で、2階建てのグリーン車と食堂車があることで話題になった。いまは2階建て車は廃車となり、山陽新幹線の「こだま」で余生を送っている・この列車ががらあきのまま発車すると、プラットフォームはますます閑散とする。「500系のぞみ」やら「700系ひかり」などが発着する他のプラットフォームと同じ駅とは思えない。
 発車20分ほど前になって、見覚えのある丸いボンネットが新神戸側から近づいてきた。これが「こだま639号」、初代新幹線車両の0系を使った列車である。1972年生まれの私にとって、子供の頃絵本や図鑑で見た新幹線車両といったら、丸いボンネットのこの車両だった。「びゃわーん、びゃわーん走る、青いひかりの超特急」などという歌を子供の頃よく歌っていたことを思い出す。東京オリンピックがあった1964年に登場し、当時世界中で叫ばれていた「鉄道斜陽論」(旅客鉄道は旅客機や自動車に押されて衰退するだろうとされた仮説)を吹き飛ばし、鉄道の安全性、高速性、定時性、大量輸送力を遺憾なく発揮した。日本の新幹線の成功がその後、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イギリス、ベルギー、オランダ、アメリカ、韓国、台湾などで高速鉄道を開発することにつながった。そのため、この0系新幹線は日本の鉄道史上最高傑作と評する人もいる。私もまったく同感である。
 車内整備が終わり、ドアが開く。通路を挟んで3列と2列のシートが並んでいた車内は、グリーン車並みに通路を挟んで2列-2列に改められたため、シートはきわめてゆったりしている。そのほかは角ばった天井のエアコン吹き出し口などかつての0系を思い出させる部分が多く残っていた。走り出すと、現在の車両と違って、加速は鈍重だが、どっしり感のある走りで、快適な乗り心地だ。新神戸を過ぎ、トンネルをいくつか過ぎると市街地が開けてきて西明石に着く。新大阪を発車して30分ほどでまだまだ名残惜しいがここで降りる。ここで「のぞみ」に道を譲るので10分ほど停車する。私は、乗り継ぎの電車の時間を気にしながら、最後尾の車両に行って、もう乗ることが無いと思われる0系とのお別れに、最大の特徴である丸いボンネットを撫でた。「たくさんの人たちに夢と希望を与えてくれてありがとう。そして本当にご苦労様でした。私達はあなたが鉄道の新しい時代を築いたこと、世界中の高速鉄道の魁になったことを忘れません。さようなら。」そう心の中でつぶやくと後ろを振り返らずに階段を下りた。

 西明石駅から新快速電車に乗り換えて加古川で降りる。加古川から播州平野を走る加古川線とそこから分岐する2本のローカル鉄道に乗る予定である。加古川駅からシルバー地に色々な色がパッチワーク状に塗られた電車に乗る。加古川を発車すると、山陽本線とは明らかに社葬が違う。農地が増え、家の作りも古びたものが多い。3つ目の厄神で降りる。駅の周囲には黒い壁に銀色の屋根の古い作りの家が並んでいる。ここで3月末に廃止になる三木鉄道に乗り換える。1両のディーゼルカーは車内は古びていた。座席はほぼ埋まっていた。後ろのほうに座っていたおじさんが、朝から1杯引っ掛けてきたのであろうか、とても陽気である。少しでもお客を増やそうとする経営努力の跡なのだろうか、わずか6.6km.の鉄道に9つの駅がある。そこを14分かけて走る。終点の三木駅は国鉄時代からの古い駅舎であった。三木には、1578年から80年にかけて豊臣秀吉と別所長治によって戦われた合戦があり、長期にわたる篭城戦になり、最後は城内の食料も水も絶え、「三木の干殺し」とよばれる悲惨な戦だったらしい。城主の別所長治の切腹により戦は終結する。時間があればそんな三木城址を見てみたかったが、駅の中に張り出されている地図を見ると、折り返し列車の発車までに見てくるのは困難な距離であった。

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