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みちのおくへ~下北・津軽紀行 ⑤

【④ 津軽平野の鉄道を愉しむ 下 8月9日】

 津軽鉄道は五所川原から津軽中里まで津軽平野の北部を走る鉄道である。ほぼ中間地点である金木を除きさほど大きな町は無く、ダルマストーブを装備した「ストーブ列車」や秋の「鈴虫列車」など、観光客を呼び込むことで生き残りを図っている。私が乗った列車も車内に風鈴が下がっていた。津軽鉄道名物「風鈴列車」である。発車前には車掌さんがストラップなどのグッズを売りに来た。小さいながらも奮闘する津軽鉄道に敬意を表して、列車の全面に掲げられている「走れメロス」のロゴの入ったストラップを買った。
 列車はゆっくりと田んぼの中を走る。こまめに駅があるが乗客は少ない。金木駅は大きな駅で、列車が行き違いができるようになっており、立派な駅舎がある。ほとんどの乗客がここで降りた。私もここで降りた。

 金木は戦前から戦後すぐにかけて「斜陽」、「人間失格」、「津軽」などの作品を残した太宰治の出身地である。どういうわけか高校時代の私の周囲には太宰のファンが多かった。私自身、「人間失格」や「斜陽」を何度も読み返した。高校時代の思い出に浸るわけではないが、バッグの中には「人間失格」の文庫本が入っている。
 駅前から10分も歩くと太宰の生家である「斜陽館」に着く。「斜陽館」、つまり旧津島家は木造2階建ての非常に立派な家だった。太宰の生家である津島家は、津軽地方有数の大地主であった。大きな蔵もあった。太宰の文学に関する資料を見ながら、太宰が少年時代と1945~46年の疎開時代を過ごした家を回った。
 金木駅に戻ると、駅は非常に混んでいた。私は往復切符を買うと駅に併殺された物産館に避難してジュースを飲みながら北京オリンピックの女子柔道の試合の中継を見た。どうも結果はあまりはかばかしくないようである。
たくさんのお客さんが改札を通ったが、私を除いて皆五所川原行きの列車が入るプラットフォームに行き、津軽中里行きの列車が入るプラットフォームに残ったのは私ひとりだった。添乗員さんに引率された団体さんの一団もいて非常ににぎやかだ。
 津軽中里行きの列車は非常に空いていた。15分ほどで津軽中里に着いた。折り返しの列車の発車まで30分弱あったが、周囲には小さな集落があるだけなので、駅前を少しだけぶらぶらして列車に戻った。そうしているうちに観光バスが駅に横付けされ団体のおばさんたちがにぎやかに列車に乗り込んだ。津軽中里から金木までは、おばさんたちと私だけだった。
 五所川原に戻り。JRで津軽平野南部の大鰐温泉駅に出た。ここから弘南鉄道のもう1本の路線である大鰐線に乗り弘前に戻った。中央弘前駅は古びていて、歴史的な建築物が多い弘前の町並みに似つかわしかった。
 

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