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妊婦「たらい回し」報道について

 ここしばらく「妊婦たらい回し」事件についてのニュースを聞かない日はない。ことの起こりは東京という、医療崩壊とあまり縁のなさそうな地域で、脳内出血を起こした妊婦が8つの病院から受け入れを断られ、結局子どもこそ助かったものの妊婦は死亡したことがありました。それ以前にも奈良県で出産中に脳内出血を起こした妊婦が18の病院をたらい回しにされた挙句死亡したことがありました。この問題についてのマスメディアの報道についていくつか疑問があるので私なりに問題点をまとめてみました。

 まず1つは、本当にたらい回しなのかということです。出産中あるいは目前の妊婦の脳内出血は非常に難しい案件であると言うこと。このような状態の患者を治療するには、①脳外科の医師がスタンバイして、手術室も開いていること。②CTの技師もスタンバイしていること。③ICU(集中治療室)に空きがあること。④緊急の帝王切開が必要となるので、産科医がスタンバイし、手術室がスタンバイしていること⑤胎児の状態が悪くなっていることも考えるので、NICU(新生児集中治療室)が開いていること。以上の①~⑤の全ての条件がそろわなければ受け入れることができない。たとえ廊下のソファーでもいいから受け入れて欲しいなどという報道を聞いたことがありますが、脳内出血を起こした妊婦を廊下のソファーに受け入れて一体何ができるのでしょうか。

 次に、妊娠・出産は本当にリスクが無いことかということです。妊産婦10万人あたりの死亡率は、2005年で4,4人同年のアメリカは10人、日本は相当低いとはいえ、決して皆無ではないこと。妊娠・出産は祝福すべきことではありますが、安全なことだなんで絶対には言い切れないこと。ちなみにアメリカでは妊産婦の死亡率がやや上昇しています。これは、医療訴訟の多発によって、週によっては産科医がほとんどいなくなってしまった州があるからだと言われています。

 3つ目は、まるで産科医を悪者のように報道する姿勢についてです。奈良の妊婦が死亡ときの報道はすさまじいものでした。しかし、冷静に見てみると、医師は最善を尽くしていましたし、受け入れを断った側にも止むを得ない(上記の条件を満たせない状況にあった)事情があったそうです。しかしマスメディアの報道はまるで医師や病院を殺人者のように扱っている野のでした。医師や病院を叩くことでこの問題が本当に解決するのでしょうか。

 この問題の解決には、医師の養成から医療制度全般について見直していく必要があるのだと思います。誰だって激務の割には待遇で報われず、悪くすれば名前がテレビで報道され、悪者のように扱われ、法廷に引っ張り出される産科医の仕事なんてやらないでしょう。医師の激務を少しでも軽減する方法、産科医の人を医療訴訟から守るためのしくみ(明らかな故意が認められない限り刑事訴追されないとか)など、提案するような報道を望みます。

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コメント

この手のニュースを見るたびに、違和感を覚えるものがあります。
そんなに生きていることが当たり前のことなのかと。
本来出産というものは相当な生命のリスクを伴っているはずですよね。
医療が整っていなかった昔はそこで命を落とすことも多々あったわけですし。
だから無事に生まれてくることは非常に喜ばしいことだし、色々ありながらも育っていくことは実は奇跡の積み重ねなのかもしれない。
医療が進んでリスクが減るというのはいいことなのだけど、
それと引き替えに生きていると言うことに対して鈍くなっていないだろうか、傲慢になっているんじゃないかとも思うのです。
本当は当たり前なことなんてそれほど有りもしないのに。

僕らは特別なことをする必要はないから、もっと生きていることに対して謙虚になった方がいいのかもしれませんね。

 そうですね。医学や衛生、栄養が改善されて、私たちは普段死をあまり意識しないで生きていけるようになりましたね。本当にやきゅう小僧さんの言うとおりだと思います。

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