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北海道の歴史を歩く 8

【8月8日 見どころ多い釧網本線】

 色々なところを旅していると、不思議と相性のいい町に出合うことがある。その相性のいい町が釧路である。その中でもすきなのが、釧路川河口近くにかかる幣舞橋(ぬさまいばし)とその周辺である。今回も1時間40分ほど時期餡があるので、駅前から夏祭りをやっている通りをまっすぐ下り、昼食がてら橋周辺をぶらぶらした。僅かに潮の香りを含んだ川風を受けながら歩くのは気持ちよかった。

 釧路発14時52分発、「釧路湿原ノロッコ4号」に乗る。ノロッコとは聞きなれない言葉だが、のろいトロッコという意味なのだろうか。決して呪いトロッコではない。釧路と網走を結ぶ釧網本線は豊富な観光資源に恵まれている。釧路の次の東釧路を過ぎると間もなく釧路湿原を走る。他にも、摩周湖、知床半島への玄関口になる駅がある。あとは、摩周~川湯温泉間のルートを変更して、屈斜路湖の東岸を走るようになれば完璧だろうと思う。しかし、この釧網本線をはじめ、北海道の鉄道はもっと切実な理由で建設されたことは心にとどめておくべきだろう。北方の軍事大国であるロシアの脅威は鉄度に限らず北海道開の近代史を考えるためには忘れてはならない理由であろうと思う。本州の鉄道路線がおおむね明治時代には既に町ができて人口が定着していたところを結んだのに対して、北海道の鉄道は人口が希薄で開発が遅れた地域が多かった。わざわざそんなところを選んで結んだのではなく、北海道のほとんどの地域がそうだったのである。

 ディーゼル機関車を先頭にしたトロッコ列車に乗る。夫婦や家族などの乗客が多く、一人旅の乗客は少ない。甲高いホイッスルを鳴らすと、軽い衝撃があって「ノロッコ」は発車した。最近ではめったに体験できなくなった機関車牽引列車の味わいである。トロッコではあるが、かつて札幌近郊で普通列車として走っていた車両を改造したものだから、乗り心地はいい。東釧路を過ぎろと早くも湿原が現れる。しかし、本領を発揮するのは次の遠矢を通過してからである。どこまでも続く湿原、焦点をどこにあわせたらいいのかわからなくなるほど広大な風景であるが、それがいい。とつぜん車内がざわめく。右側の山の斜面にエゾジカがいたのだ、いっせいにシャッターを切る音が聞こえる、私もあわててカメラを向けるが、のろいトロッコとはいえ間に合わなかった。右を見、左を見、のろい列車で慌しくとも楽しい時間を過ごしているうちに終点の塘路に着く。27kmをおよそ1時間かかったのだから、確かに遅い。

 塘路はいいところだった。駅周辺には小洒落た建物があり、白樺の木が立っており北欧の町にでも来たような気分になる。この後乗る網走行きの列車まで29分しかないから慌しい。その間に駅前を少し歩いた。
 塘路発16時19分の普通列車はわずか1両であった。私は後ろのデッキにたった。塘路を過ぎても塘路湖やシラルトロ沼などの見どころがある。人口は極めて少ない。今は夏の観光シーズンだから旅行客が多く乗っているが、普段は1両で十分間に合う程度のお客だろう。厳しい経営環境が伺える。
 塘路から3つ先に標茶と言うやや大きい町があり、そこなら降りる人が多いだろうと思っていたら、案の定そのとおりになって空席を見つけて座ることができた。標茶を過ぎると上り坂に差し掛かる。250馬力のエンジンを2台搭載したディーゼルカーは軽々と坂を上っていく。摩周、川湯温泉と山の中を走る。川湯温泉を過ぎると釧路支庁と網走支庁を分ける峠を越える。緑は畑に囲まれた小さな集落。坂を下るにしたがって区画の大きい畑が広がってくる。既に18時近く、夏の陽は山に落ちかかり、防風林と畑をオレンジ色に染めている。

 知床半島の玄関口である知床斜里でお客が増えた。間もなく西へ向きを変えるとオホーツク海の海岸線すれすれを走る。浜小清水、北浜と進むうちに、太陽はどんどん高度を下げ、オホーツク海に没しようとしていた。まるで進みゆく時間に最後の抵抗をしようとするかのように、太陽はオホーツク海を朱色に染めていた、反対側の空には既に夜の気配が迫っている。
 半ば暗くなった網走駅に18時49分に着いた。乗客はあっという間に散ってしまい、プラットホームでぶらぶらしていた私はひとり取り残された。人気のないプラットホームは午後7時前とは思えない。この瞬間、胸が締め付けられるような不思議な感情が胸のそこから湧き上がってきた。ああ、これが最果てに来たと言うことだな。

 その夜は網走駅に近いホテルに泊まった。夕食にはモヨロ鍋といって、魚のツミレに、地場の魚、野菜を入れた鍋料理を食べた。塩味のスープが美味しくビールがかなり進んだ。
 

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