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台湾紀行~東部編 2

【12月27日 雪山トンネルを越えて】

 昨日はだいぶ夜更かししたのに、今朝は6時前にきっかり目が覚めた。われながらたいしたものだと思う。今日ははじめての台湾旅行のとき出会ったおじいさんと再会する日である。2006年1月、日本に帰国するために桃園駅前で出会ったおじいさんと数分間話した。それがきっかけになって文通をするようになり、同年12月に台湾を裁縫したときにもお会いすることができた。ご自宅に招いていただき暖かい歓待を受けただけでなく、翌日にはかつて部下だった方にクルマを出してもらって、台北近郊の九份(「千と千尋の神隠し」の妖怪の村のモデルとも言われる)と歴史ある港町の基隆市を案内していただいた。その後も手紙でのやり取りは続き、今回は3回目の台湾旅行になるが、およそ2年ぶりの再会を希望した。

 9時過ぎ、ホテルのロビーに懐かしい顔が現れた。おじいさん(以下仁愛先生とします)は90歳近い年齢であるが、相変わらずお元気そう。その部下の方(以下基隆氏とします)もふくよかな身体に笑顔をたたえてお元気そうであった。このお二人だけでなく、今日は仁愛先生の孫娘の方と基隆氏の奥様も同行してくださるとのこと、まったくこのような歓迎振りには頭の下がる思いである。
 基隆氏の運転するフォードに5人が乗り込んだ。私が簡単な自己紹介をすると仁愛先生と基隆氏が中国語に翻訳して女性のお二人に翻訳してくれる。私は中国語はまったくだめである。旅行会話の本を持ち歩いているが、中国語は声調と呼ばれる音節内での高低の変化がが難しい、私は無アクセント地帯と呼ばれ「端」と「橋」の発音の区別ができないうえにひどい音痴である。旅行会話の本のとおり発音してもまず通じたためしがない。英語もあまり込み入った会話は無理である。それでも一生懸命翻訳してる、一生懸命聞いてくれることはとても嬉しい。
 さらに嬉しいことに、今日は宜蘭県に行きましょうということになった。宜蘭県は台北県の東にある県であるが、日本のガイドブックにもここのことはあまり大きく触れられていない。そもそも、ガイドブックの中には台北市内とその周辺、後はせいぜい高雄周辺と花蓮周辺を取り上げておしまいというものさえあるから情報が少ない。しかし見どころがたくさんあるらしいということは知っている。ぜひ地元の人に案内してもらいたいと思っていたところだ。もうひとつの楽しみは、最近台北と宜蘭県を結ぶ高速だうろが開通したが、その高速道路に雪山トンネルというトンネルがある。そのトンネルが全長12.9km.もあり、世界で5位の長さである。日本で最長の関越トンネル(関越自動車道がおよそ11km.だから、それよりもだいぶ長い。

 基隆氏のフォードは新生南路に入り高層ビルの間を抜け順調に台北市内を南下する。新生南路から辛亥路に入ると間もなく左側に緑に囲まれた大学のキャンパスが見えてくる。仁愛先生が「あれがかつての台北帝国大学ですよ」と教えてくれる。帝国大学は、東京、京都、仙台、福岡、札幌、大阪、名古屋に置かれ、現在の東京大学、京都大学、東北大学、九州大学、北海道大学、大阪大学、名古屋大学の前身となった。大日本帝国の最高学府とされ、日本の学界、政界をリードした。これらの他に、当時外地と呼ばれた朝鮮に京城帝国大学、台湾に台北帝国大学が置かれた。朝鮮や台湾、関東州、南洋諸島などは1945年、太平洋戦争での敗戦を受けて日本の統治から離れたが、現在の韓国のソウル大学は京城帝国大学の建物などの施設の一部を引き継いでいる。また台北帝国大学は台湾大学の前身になっている。

 間もなく国道3号線にはいる。国道といっても日本でいう高速道路に当たるもので、国道1号線と3号線は台湾の西岸を南北に走るものである。これをしばらく北に進み、ジャンクションをとおり国道5号線にはいる。しばらく山の中を走るといよいよ雪山トンネルに入る。トンネルはさすがに長い。全長13キロメートルとして、基隆氏のフォードはおよそ90km/hで進んでいるから、抜けるのに10分くらいかかった。トンネルの10分はひたすら長い。走っても走っても先が見えない感じである。ようやく抜けると目の前にはそれまでの山がちの地形から一変して平野になる。宜蘭県である。少し遠くには太平洋と亀山島という島も見える。トンネルを過ぎて風景ががらっと変わる。そのときの「おおっ」という驚き、これがトンネルの醍醐味だと思う。

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