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「嫌われ松子の一生(上・下)」 山田宗樹 幻冬舎文庫

 人は誰でも愛を求め、幸せをつかもうともがきながら生きている。しかし、一度坂を転がり落ち始めると容易にそれを止めることは難しい。この小説の主人公の川尻松子は不器用だがまっすぐに人を愛したが、己の弱さと運命のいたずらによりとめどなく坂を転げ落ちてしまう。そんな彼女の23歳から53歳までの転落の物語。
 
 この作品は、2006年に中島哲也監督、中谷美紀主演で映画化され、同年に内山理名主演でTBSテレビかでドラマ化されたので、そちらで見たという方も多いと思う。私もテレビドラマ版は一部を見たことがあるが、昨年末に改めて小説版を読んでみた。
 この小説の主人公の川尻松子の弱さ、それは自分の意思を強く持てないところだと思う。猛勉強をしたのも自分のためではなく、両親の愛を自分につなぎとめるため、教師になったのもそう。学校を追われた後も、亡くなるまでの間に数人の男とかかわったが、男の愛をつなぎとめるために安易に覚せい剤に手を出したり、破滅型の男と一緒に破滅していくことになる。そして、人を見る目に欠けていた。松子を骨までしゃぶりつくそうとするヒモ男を見抜けず、骨までしゃぶりつくされる直前まで疑うことがなかった。土壇場でだまされることに気づくが、逆上した松子はヒモ男を殺害されてしまう。有罪判決を受け、刑務所に服役した松子は、刑務所で美容師の資格を取り、出所後は東京の美容室で働く。この時が松子の立ち直りのチャンスで、松子も一生懸命働くが、かつての教え子龍洋一と出会ったことをきっかけに松子の運命は再び暗転する。後に洋一にも裏切られた松子は、故郷の弟と妹にすがろうと思い帰郷するが、妹は既に亡くなって、弟からは冷たく追い返される。結局すがるものすべてを失った松子は、誰も信じず、誰も愛さず生きていくことになる。

 こう書いていくと松子は救いようのない人物に見えてくる。しかし、そんなことはないと思う。松子はやや極端かもしれないが、だれでも松子のような弱さを持っていると思う。少なくとも私はそうだと思う。松子の悲しさ、苦悩。そして時々小春日和のように訪れた穏やかで幸せな日々の喜び、それらのものがとてもよくわかる。幸せって何だろう。それを考えるのにとてもよい1冊。

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