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「魏志倭人伝」の国々へ 9

 JR香椎線は2つの点で面白い路線である。ひとつは、福岡近郊を走る路線でありながら、博多にも天神にも、言い換えれば人の集まる繁華街をまるっきり無視したルートを選んだ点、もうひとつは、西戸崎駅、宇美駅と両端尾の駅が他の路線との乗り換えができない行き止まりの駅である点である。これは、この路線の歴史を紐解けば謎は解決するのである。この路線は、沿線で採れる石炭を西戸崎港まで運ぶ運炭路線として開業した。はじめは私鉄であったが、後に国有化された。福岡県の鉄道には、運炭を目的として建設された鉄道路線が多い。その多くは国鉄末期に廃止されたが、香椎線は福岡近郊であることが幸いし廃止を免れた。

 志賀島小学校前から西鉄バスに乗った私は、西戸崎駅前でバスを降りた。20分ほど何もない西戸崎駅前で時間をつぶした。香椎線の列車は国鉄時代に製造された古いディーゼルカーである。こいつは性能は非常に低いが、国鉄らしく質実剛健、丈夫で長持ちするように作られていて、製造から30年ほどたっているが、まだまだ走りそうだ。しかし、加速は非常に鈍い。のんびりと松林の間を走る。車窓がにぎやかになると香椎、鹿児島本線の乗り換え駅である。現在、西戸崎~博多間は香椎で乗り換えが原則であるが、列車本数が多く、特急、快速と速度の速い列車が多い鹿児島本線に香椎線の低性能な車両をもぐりこませるのは不可能だろう。
 香椎を過ぎると住宅地になる。アップダウンが多少でてくるから、低性能な車両はますますゆっくり走る。でも、こういうのんびり嫌いではない、嫌いではないがさすがに眠くなる。どれくらい眠っただろうか、目が覚めると駅名の看板が見えた。「長者原」しまった、乗り換える駅だ。のんびりとした列車からあわてて飛び降りる。
 長者原から篠栗線の快速列車に乗る。長者原駅でしばらく待つと、シルバーのボディのスタイリッシュな電車である。車内も凝っていて、向きを前後に転換することのできるシートは、木製のフレームに黒い本革が貼ってある。特急料金不要の列車としては全国有数の豪華な列車といっていいだろう。走りも、鋭い加速で全然違う。路線名にもなった篠栗を過ぎると山間部に入る。桂川から筑豊本線に入ると間もなく飯塚に着く。飯塚は直方と並んで筑豊炭田の中心的な町である。私も福島県いわき市出身なので、同じ旧産炭地の現状が気になっていた。そんな思いがあったが、飯塚の駅周辺の風景は、思ったよりも活気がありそうでほっとした。まぁあくまでも車窓から見た範囲であるが。飯塚を過ぎると、快速も停車駅が増える。この列車は折尾から鹿児島線に入るが、私はこのまま筑豊本線をたどって若松に向かう。そのため乗り換えるのだが、その乗り換えがけっこう面倒である。筑豊本線と鹿児島本線を乗り入れする列車は本来の折尾駅から少し離れた場所にある第二の折尾駅に停車する。ここから本来の折尾駅まで3分ほど歩いて乗り換える。ここで名物の駅弁であるかしわめしを買う。

Photo

 折尾駅から若松行きの列車に乗る。政令指定都市である北九州市だが、沿線は何となくさびしく殺風景である。列車も空いていてあまり活気がない。しかしかしわめしは抜群に美味かった。よく煮込まれた鶏肉と鶏肉のスープがしみ込んだご飯、ふんわりとした錦糸卵、そして海苔が絶妙なハーモニーを奏でている。弁当を食べ終えるころ、列車はゆっくりと若松駅のホームに滑り込んだ。

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