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福島のこれから

 私は福島県いわき市で生まれ育ち、現在は福島県郡山で過ごしている。私のこれまでの人生、39年の中で、34年以上を福島県で過ごしている。県民である私が言うのもなんだが、福島県は本当に素晴らしいところである。日本の気候は春夏秋冬の四季がはっきりしていることが特徴だが、その中でも東北地方は厳しい冬があることで、四季の変化が一層際立っている。ながい冬が終わり、草木が芽吹く時期のワクワクするような気持ちは、多分南国の人にはわからないことだと思う。水も素晴らしくきれい、その水にはぐくまれる米も美味い、その米を醸して作られる日本酒も美味い。福島県の沖合は、暖流と寒流の潮目にあたり、魚もことのほか豊富で美味い。温泉も各地にある。飯坂、磐梯熱海、いわき湯本、東山、熱塩…まだまだ数えきれないくらいある。磐梯山、安達太良など山が美しい、猪苗代湖、尾瀬、只見川、大川、水辺の景色も美しい。塩屋崎、勿来海岸、松川浦、海辺の景色もなかなかいける。それでいて、東京までの時間距離も近い、福島駅から東京駅まで東北新幹線で1時間35分、郡山駅から東京駅まで東北新幹線で1時間20分、いわき駅から上野駅まで常磐線の特急列車で2時間10分、関東でもこれより不便なところはごまんとあるだろう。

 そんな福島県の行方に暗雲がたれこめている。3月11日の東日本大震災、それに続く東京電力福島第一原子力発電所の事故により、福島県のうち、楢葉町(一部を除く)、富岡町、大熊町、双葉町、浪江町(一部を除く)、南相馬市(一部)などが警戒区域として指定された。また、飯舘村、葛尾村などが計画的避難区域に指定された。現在、いずれの地域も住民が区域外に避難しており、彼らが元の場所で生活できる目途は立っていない。また、福島県は農業や漁業が重要な産業となっているが、県内産の牛肉や米から国の暫定基準を上回る放射性物質が検出された。その影響で、福島県産の桃など、農家の方が気の毒になるような安値で販売されていた。漁業の方も、津波による港湾や漁船の被害のほか、魚から放射性物質が出ていることもあり、現在でもごく一部を除き漁はおこなわれていない。これが長期間続けば、福島県の農業や漁業は今以上に深刻な状態になると思う。

 さらに、健康被害の発生が懸念される。原発から50km以上離れた福島市や郡山市でも局所的に放射線量が高い地域がある。放射線による健康被害については、よくわかっていない点もあるが、これからどうなるのか、私も不安である。断わっておくが、私自身のことは大して心配していない、40年近く生き、見るべきものはずいぶん見てきたから、「はい、あんたの人生終わりです」と言われたら、「まぁ、しゃーねーか」と考える覚悟はできている。今、福島県にいる子どもたちと、近い将来生まれる子どもたちの健康については私は非常に心配している。こればかりは、私は祈ることしかできないのがもどかしい。

 農業、漁業の不振、それに人々の健康被害が発生したら福島県は一体どうなってしまうのか、考えただけで怖いが、私は、おそらく健康被害は発生するだろうと思っている。そうなったら、震災以来人口減少に拍車がかかっている福島県からさらに人口が減少するだろう。人口減少は内需に関係する商業やサービス業の経営不振、それに伴う雇用の減少を引き起こす、これがさらに人口減少を招くという悪循環を招く、残念ながら私にはそんな未来しか見えない。それでも私は福島県に留まり、この県の行く末を見守りたい。なぜなら、私は福島県が好きだから。いわきのエメラルドグリーンの海が好きだから、安達太良山の上の青い本当の空が好きだから。

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コメント

今晩は、後数時間で新しい年を迎えますね・・・今年はとても大変なことが起こりましたね・・でも、時間は元に戻れませんし反対に刻々と進んでいきます・・復興もそうならばよいんですがこればかりは進み方が遅々としていて進んでいるのかどうかさえ最近は報道も少なく遠くで心を痛めているだけです・・くる年は笑顔が少しでも増えると良いですね。復興地の人々に明るい新年が来るように祈りたいと思います。
また、よろしくお願いします。

エムエムさん、遅くなってすみませんでした。

今年もどうぞよろしくお願いします。原発の廃炉までは相当長い道のりになりそうです。原発周辺の町村に住民が戻れるのはいつになるのかわかりません。同じ福島県民として、その日が早く来ることを願っています。そうなったら、エムエムさん、ぜひ福島にいらしてください、ご案内します。

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