人類の遺産への犯罪行為は許せない
東京都内の図書館で「アンネの日記」やその関連書籍がページを破られるなどの被害を受けている。その数は5区、2市で合わせて220冊以上にのぼるという。「アンネの日記」は、ユダヤ系ドイツ人の少女、アンネ・フランク(1929~45)がナチス・ドイツのホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人への大量殺戮政策)から逃れて隠れ住んだアムステルダムで彼女自身の生活、家族やユダヤ人の仲間たちの様子を描いたものである。ナチスに追われ、絶望的な状況になりながらも、明るく、希望を持っていくるその姿はドイツやオランダのみならず世界中の人々に読まれ、戦争の非人道性と平和の大切さ、人間の尊厳を多くの人に伝えてきた。
この作品は第二次世界大戦の終了後、アンネの父親オットーによって発表された。その直後から様々な誹謗中傷にさらされてきた。代表的な例が、ナチスの考え方に共感し、ホロコーストを否定しようとする者によるものである。彼らにとってみれば、この日記の存在が自分たちの主義主張を広めるのに目の上のたんこぶ的な存在だったのだろう。日本でもナチスの考え方に共感するものは少数ながら存在し、最近では在特会などの「行動する右翼」がナチスを礼賛する行動を起こしている。ひょっとしたらこの事件の背後にはそのような動きがあるのかもしれない、もしそうだとしたら恐ろしいことだと思っている。私は、人がどんな思想を持ち、どんな言論活動をしようとも自由だと思っている。しかし、力で他人の言論の自由を縛ろうとするやり方や、自分にと手都合の悪い書籍を破るようなやり方には到底賛成できない。もし、この犯人が言論に基づくものだったら、私は強く抗議し、批判する。もちろん、いたずらだからと言って許されることではない。本は、人間の言葉を後世に伝える最良の手段だと思っているし、どんな本も人類にとって貴重な遺産だと思っている。ましてや「アンネの日記」は特に貴重な、未来へ残すべき人類の遺産だと思っている。
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