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みんなの足は大切に

 数年前のことだが、秋のある日安達太良山の中腹のスキー場に行った。当時乗っていたスバル・フォレスターに弁当と本を積み込んだ。スキー場の駐車場にクルマを止め、ゴンドラリフトに乗って山頂を往復し、乳首と呼ばれている山頂からの眺めを楽しみ、再び駐車場に戻り、フォレスターの窓を全開にして安達太良山の澄み切った空気を吸いながら弁当を食べ、持ってきた本を読み、眠くなったら助手席のシートを倒してひと眠りした。夕方近くなり、そろそろ帰ろうと思って、麓に向かってフォレスターを走らせた。すると車道の隅を歩いている老夫婦の姿が見えた。ここから麓の温泉まで5km以上、きつい下り坂だからお年寄りの足では1時間やそこらでは着かないだろう。私は迷うことなく車を止めて老夫婦に声をかけた。「岳温泉のバス停までお送りします、どうぞ乗ってください」。老夫婦はほっとした表情で車に乗り込んだ。話を聞いてみると、安達太良山の風景が気に入って十数年ぶりに来て見たそうだが、前回はあった路線バスがなくなっていて困ったということだった。行きは岳温泉まで路線バスで行って、タクシーに乗ったそうだが、帰りはタクシーの姿が見えず、岳温泉まで歩こうと思ったそうだ。

 この例に限らず、地方の鉄道や路線バスは衰退が激しい、私の住む福島県内でいえば、JR磐越東線、磐越西線の喜多方以西、只見線、会津鉄道は路線の廃止こそ免れているが、運転本数は減少傾向である。福島交通、新常磐交通、会津バス、JRバス東北、JRバス関東、磐梯東都バスでは利用の少ない路線の減便や路線廃止が著しい。福島県はまだいい方で、自家用車の利用率が全国トップクラスの群馬県では、人口34万人の前橋市と人口12万人の桐生市を結ぶ上毛電気鉄道がここ30年以上ずっと経営難にあえいでいる。地方の公共交通機関はどこもこんな状態である。

 地方では自家用車の利用が当たり前になっている。大人の人数分の自家用車がある過程は決して珍しくないし、農業をやっている家庭ではそれに加えて軽トラックがある過程も珍しくない。そのような状況では、バスや電車は既に日常生活から縁遠いものになっている。せいぜい高校生や、車を運転できないお年寄りくらいである。彼らにしても、最近は高校のそばの道路が朝夕は送り迎えの車で混雑するような有様だし、お年寄りも病院が送迎バスを出すからそれに乗って通院する姿は珍しいものでなくなっている。

 それでは、地方の鉄道や路線バスはもういらないものなのか、私はそう思わない。私たちの基本的な人権の一つに交通権がある。人は移動するものである。たとえ子どもでもお年寄りでも、病気があっても障害があってもである。自家用車はドアからドアへ、誰にも邪魔されずに快適に移動できるが、残念ながら誰もが運転できるものではないし、誰もが保有できるものでもない。たとえば私だって歳をとって身体の機能が衰えれば車の運転を諦める日が来るかもしれない、あるいは、認知症になるかもしれない。他にも、身体に障害のある人、知的障害のある人、精神障害のある人の中には車の運転ができない人もいるし、現在の日本の経済状態を考えると、経済的な理由で自家用車の保有ができない人が増えることも考えられる。そして、私が自分の車に乗せた老夫婦のように、外部から来た旅行者もいる。このような人たちにも交通権がある。そのためにも鉄道やバスは必要だと考えている。

 とはいえ、地方の鉄道会社やバス会社は乾いたぞうきんを絞るような合理化で何とか路線の維持をしている。かつてあるローカル鉄道の社長が、「せめて地元の人が月に1度でも乗ってくれれば」と言っていた。そう、地域の公共交通機関を支えるのは地域の住民の利用が一番なのだと思う。私はこのブログを読まれている皆さんに提案したい、月に1度は鉄道やバスでお出かけしてみませんか。地方は自家用車中心の社会である。このような地方では、ロードサイド店や大型ショッピングセンターが好まれ、古くからの市街地や駅前にある商店は敬遠されることが多い。しかし、電車やバスで出かければ、中心市街地に行くことも駅前に行くことも苦ではなくなる。ロードサイド店や大型ショッピングセンターにあるような金太郎飴のようなチェーンではなく、地域に根差した店に出会えるだろう。そして、美味しいものを食べてビールを飲んでも問題なく変えることができるというメリットがある。鉄道なら渋滞知らずだし、バスなら渋滞に巻き込まれても眠っていればいい。あなたもぜひ、月に一度の鉄道やバスでのお出かけを楽しんでほしいと思う。

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