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道栄えて国滅ぶ

 かつて、「我田引鉄」という言葉があった。ここでいう田とは「票田」つまり政治家によって命の次に大切な選挙区のことである。大正時代平民宰相とよばれた原敬(身分制度があった戦前においてはじめて平民で総理大臣になった)は、国会で、自分の地元である国鉄山田線(盛岡~宮古~釜石 とくに盛岡~宮古間はほとんどが人口の希薄な北上山地を通る)の建設について野党議員から「総理はこんな山の中に鉄道を引いて、山猿でも乗せるつもりですか」という指摘を受けたことがある。戦前から1960年代くらいまで、鉄道が陸上交通の主役であったころは、政治家は鉄道建設に一生懸命になった。中には北海道にあった国鉄白糠線のように、10年少々で廃線になった路線もあった。

 1950年代から急速にモータリゼーションが進んだ日本は、1963年(昭和38年)の名神高速道路の栗東~尼崎間の開通を皮切りに急速に道路の整備が進んでいく。1995年(平成7年)九州自動車道人吉~えびの間の開通で、青森から鹿児島まで高速道路で結ばれ、いまや、高速道路の建設は幹線の建設から支線的な路線の建設に移っている。

 各地を旅していると、「こんな場所に」というような場所で高速道路や自動車専用道路の建設が進んでいることがある。具体的な場所は差し控えるが、国道があり、立派な国道のバイパスがあり、どちらもクルマがスムーズに流れていることろでも新しい道路の建設が進んでいる場所がある。政治家にしてみれば、無駄とは知りつつも道路を建設することは、選挙区の有権者に「仕事をしています」というアピールができるし、選挙区の有権者にしてみても新しい道路ができて嫌がる人は少ないだろう。あわよくば道路用地が自分の所有地に重なれば用地買収で新しい家が建つと考えている人もいるだろう。

 私が住む福島県いわき市でも、東日本大震災の後、小名浜道路(仮称)という道路の建設計画が持ち上がった。全長8.3km、常磐自動車道といわき市東部の工業地帯であり、アクアマリンふくしま(水族館)などの観光資源に恵まれた小名浜地区を結ぶための道路である。私はこの計画には反対である。お金をかける割には効果がさほど見込めないからである。計画ではいわき市山田町に常磐自動車道と小名浜道路を結ぶインターチェンジが設けられることになっている。東京・水戸方面から小名浜を目指す場合には、現状ではいわき勿来インターチェンジから国道289号線勿来バイパス、国道6号線常磐バイパスを経由することになるが、このうち国道6号線常磐バイパスは信号がほとんどなく、片側2車線化の工事が進んでいる現状では、新しい道路の必要性は低い。仙台・郡山方面から小名浜を目指す場合は、いわき湯本インターチェンジから福島県道14号線、国道6号線を経由して小名浜に向かうことになるが、県道14号線は既に片側2車線で整備され、国道6号線も片側2車線化が進展している。このような状況下では、小名浜道路の建設による所要時間の短縮、」渋滞の削減の効果は非常に限定的で、多額の税金を投入する意味はないと思う。もし、どうしても小名浜道路を建設するというなら、国道6号線や常磐バイパスの片側2車線化の工事は即刻中止すべきだとお思う。

 日本は2008年から人口減少が始まり、団塊ジュニアの出産もほど終了した現在、今後数十年は人口が増加に転じることはないと思う。そうなれば自動車の所有台数も減少に向かうことが明らかである。何もしなくても渋滞は解消する状況にある。そのような状況で地方に新しい道路を作る理由はない。また、日本政府はギリシャを上回る財政赤字を抱え、近い将来国債の償還と高齢者の年金のために極度に財政が硬直化することは避けられない状況になっている。それがわかっているからこそ、税金は本当に必要な所に使ってほしいと思う。どうか、道路栄えて国滅ぶという状況にだけはなってほしくない。私たちは自分が生きている間が良ければそれでいいではない、未来にも責任があると思う。

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コメント

小名浜道路、出来れば便利であることには変わりありませんからね。
6号バイパスも着々と片側二車線化が進んでいますね。
私は、完成した後の効果が非常に関心があります。

 私もクルマに乗ることは好きなので、新しい道を走るのはとてもわくわくします。ただ、財政の問題もありますし、人口減少・高齢化の問題もあります。そのような中で、これまでクルマのための道路整備に偏り過ぎていたところは見直さなければならないと思います。私は、歩行者、車いす、自転車などのための道路整備。路線バスの持続可能者基盤整備も必要だと思います。いずれにせよ、交通論については別の機会に原稿にしたいと思います。

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