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小説「2030年」 ②黄昏時

 電車はゆっくりと上野駅を離れた。電車の中は関はすべて埋まり、立っている人もいるが、程よい間隔を開けることができる程度の混雑である。今日は金曜の夕方、乗客の表情には安どの表情も見えるが、みんな疲れているのか押し黙っている。電車がレールの継ぎ目を超える「コトン、コトン」という音のほかは、寝ている乗客の寝息くらいしか聞こえない。窓の向こうにはオレンジ色に染まる街並みが見える。

 2030年、日本はこの空のような黄昏時を迎えていた。1980年代から1990年代、日本はアメリカに次ぐ経済大国になった。しかし、1990年代のバブル経済の崩壊をきっかけに日本経済の低迷が始まり、2009年には中国に抜かれ3位に転落した。その後、インドに抜かれ、ブラジルにもほぼ追い付かれている。世界の中での日本の地位は低下傾向が止まっていない。それは、人口の推移を見ても明らかである。日本の人口は2008年に1億2808万人でピークを迎えた。2030には1億1500万人程度である。人口の減少率以上に、働く年齢の人口の減少が大きく、高齢者の割合が増加した。働く年齢の人口の減少は、日本の経済力を押し下げ、高齢者の増加は社会保障の負担を増加させることにつながり、日本はその悪循環の中でもがいていた。

 明生は、先日海外で働く友人からのメールの内容を思い出した。彼は大学卒業後、いったん日本の企業に就職したが、日本社会の先行きに絶望して、海外の企業に転職した。いや、彼が例外なのではない、近年では、日本で生まれ育ち、日本の学校で学んだ人が海外に流出することが問題になっている。明生は日本に両親がいるし、友人も多くは日本国内に戻っている、もちろん海外で働く魅力は知っているが、いまだ決断がつかないでいた。

 電車は速度を落とし、地下鉄や東武鉄道との乗り換え駅である北千住駅に着いた。プラットフォームには電車を待つ人が並んでいた、さすがにここからは少し混みそうだ。

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