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小説「2030年」 ①上野駅にて

 2030年、初夏、太陽は西に傾いてビル街をオレンジ色に染めていた。ターミナル駅には家路を急ぐ人がたくさん歩いていた。その中に少し小柄で、なで肩の30代の男性がいた。彼の名は明生、都心の会社に勤めるサラリーマンである。少し早めに仕事を切り上げた彼は、郊外にある自宅に向かっていた。明生は昼休みに60代の上司から聞いた話を思い出した。その上司が20代だった1990年ごろは、通勤電車が身動きできないほど混雑していたこと、電車のドアを閉めるために、駅の係員が乗客の身体を車内に押し込んでいたこと、通勤に1時間や2時間もかかる人がたくさんいたそうだ。今となっては信じられない話で、事実、1990年代をピークに2010年代までは緩やかに、それ以降はペースを上げて首都圏の電車の混雑は緩和していた。もちろん、ダイヤの改善や、駅設備、車両の改善の効果もあるし、2020年ごろをピークに首都圏の人口が減り始めたこともある。明生が地方の大学を卒業して東京でサラリーマンになった頃には、通勤ラッシュもだいぶ緩和していた。

 ICカードを財布に入れたまま、非接触式の自動改札機を通り、常磐線快速電車の発車するホームに行く。目の前にはシルバーのアルミ合金製の電車が止まっていた。まだいくつか座席が空いているので、明生は腰をかけた。発車までは3分ほど時間があるが、明生は目を閉じてそのまま待った。やがて、電子音のチャイムが鳴り、電車は静かに発車した。

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