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「野宿入門」 かとうちあき 草思社

 本を読むということはその本の著者の人柄に触れることだと思う。だから、人と人の愛称があるように人と本の愛称という者はある。そのあたりは最初の数ページを読めば何となくわかってくるものだ。この本の著者のかとうちあきさんは突き抜けた面白さがある人だと思う。

 「29歳、独身、女。風呂は、まだない」

 という言葉でこの本は始まる。この言葉だけで、「ああ、この人センスあるな」と感心した。かとうちあきさんは中学生の頃から野宿にあこがれ、高校生で野宿デビュー。友達と2人で東京から熱海へ徒歩旅行をして、途中の道路の側溝で寝たのが野宿の始まり、その後、大学生で本格的に野宿をして、大学卒業後は就職をせずに徒歩旅行で野宿をしながら、介護福祉士の仕事で最低限のお金を稼ぐ生活をする。後に「人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』」の編集長になる。

 この本には野宿の実践的なコツが凝縮されている。段ボールや新聞紙の活用の仕方、安全な野宿場所、コンビニや警察官を味方にするためのコツなど。野宿のコツ、と思われる方もいるかもしれないが、私たちにとって野宿はそんなに縁遠いものなのか?そんなことはないと思う。大地震で家が倒壊して、避難所に行ったら満員御礼なんてことは地震が多く人口密度の高い日本ではあり得ることである。

 しかし、この本の魅力はそれだけではない。かとうちあきさんの生きざまそのものが面白い。常識にとらわれず、自分の思う道を突き進む生きざまは痛快である。法政大学社会学部を卒業したら、いい会社に就職することは難しくないし、そこでバリバリ働いたら風呂付のアパートどころか、ベイエリアの高層マンションに住むことだって難しくはないあろう。しかし、そんなことには目もくれず、わが道を行き、年収は100~300万円、余計なしがらみを持たず、自分の好きなことを人生の中心に据える生きざまはうらやましいし、読後にそう快感を覚える。かとうちあきさんは現在35歳、今でもどこかで野宿をしているのだろうか。

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