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青空の向こうに

 去年の4月に母が入院してしばらくして、同じ病室に背の高い女性が入院してきた。年令が近いこともあり、私も彼女と話すことが多くなった。彼女は癌で入院していた。本人も身体がつらかったと思われるが、母の面倒を見てくれた。荷物の整理から、入院生活のコツの伝授などであった。私も、母の見舞いに行ったのか、彼女に会いに行ったのかわからない状態になった。彼女は以前、三重県に住んでいたことがあったので、三重県の伊勢うどんのたれをいただいたこともあった。うどんと言えば、あるとき、彼女と彼女の妹さんと母と私が病室にいたときに、茹でたうどんを水で締めずにそのままたれにつけて食べるうどんを何と呼ぶか話題になったことがあった。彼女と母はそれは「泥棒うどん」だといい、彼女の妹さんと私はそれは「釜揚げうどん」だろうといった。結論は出なかったけれど、たくさん笑ったし、病気の人を見舞いに行ったのに、元気をもらって帰ることも度々あった。
 6月末に彼女は自宅の近くの病院に転院した。その時期彼女はとても具合が悪く、顔も身体もすっかり痩せてしまっていたのでとても心配した。せめてものお礼の気持ちに、金魚や朝顔などの絵が描かれたタオルを彼女に贈った。彼女はとても喜んでくれた。その時にLINEのIDを好感したので、時々メッセージのやり取りをした。7月末に彼女が入院する病院に見舞いに行った。転院前よりいくらか顔色もよく、顔もふっくらしていたが、身体の痛みは辛そうだった。私は別れ際に手を握った。悲しいほど細い指を温めるように握った。そして、元気になったら、彼女と妹さんと母と私の4人で美味しいものを食べに行きましょうと約束をした。
 8月頭に母が無くなった。そのことを彼女に伝えるべきではないお思った。しばらく連絡をしないようにしていたが、私は彼女に会いたい気持ちを抑えられず11月末に彼女が入院する病院に行った。彼女へのプレゼントとして、あまり硬くない焼き菓子とフラワーアレンジメントを持って。4か月ぶりにあった彼女はずいぶん痩せていた。彼女に話を聞くと、一度は退院できたそうだが1週間ほどで具合が悪くなり再び入院したそうだ。それでも、私は再会できたことがうれしかったし、彼女も喜んでいた。1時間ほどで病院を後にした。駐車場から彼女の病室を見上げた、その時になって急に「これが今生の別れかもしれない」おいう思いが込み上げてきた。
 1月に入って、弟が新聞の死亡記事で彼女の死をしり、私に連絡をしてきた。私は彼女の告別式に参列した。祭壇の中央でほほえむ彼女はふっくらおとした顔で笑みをたたえていた。病気になる前の彼女はこんなに素敵な女性だったのだな、病気にならなければもっともっと幸せになれたのに、そう考えていると涙が出てきた。見上げるとスカイブルーの美しい空、あの青空の向こうで、幸せになってほしい、心からそう思った。

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日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事

コメント

今年もよろしくお願いします。
よき出会いだったとと思います。悲しいけれど。
彼女もやえもんさんの一部に取り込まれたと思います。
我々は常によき出会いを重ねて生かせていただいている、としみじみ思いました。
身体大事にしていきましょう。これからもよき出会いを!

今年もよろしくお願いします。

多分人生に無駄な出会いは無いのだろうと思います。今回のことは本当に残念ですが、私は前を向いていきたいと思います。

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