A君のこと
私がA君に初めて会ったのが、大学2年の春だった。当時入っていた文化系サークルに新入生として入ってきたのがきっかけだった。A君は背が高かったが、愛嬌のある顔で、威圧感など全く無縁の男であった。私とA君はすぐに仲良くなり、サークルが終わった後に、彼の住んでいるアパートの部屋で酒を飲み明かしたことが何度もあった。
彼は、浪人をして、誰もが知っている都の西北にある有名大学に合格していたがそれも蹴って故郷から遠い仙台にあるこの大学に入ってきた。社会福祉について学びたいという強い希望を持っていた。私は驚いたが、彼の強い意志には私も驚いたし尊敬もした。しかし、彼の表情は夏休み明けから曇りがちになった。大学の講義の内容、教授、そして学生、全てが彼が思い描いていたものとは違ったようだ。私は彼の悩みに気づいたものの、彼にうまくアドバイスすることはできなかった。
私が3年生になってすぐ、思うところがあり私はサークルを辞めた。彼とも会いづらくなり、何度か立ち話をする程度の関わりしか持てなかった。やがて、人づてに彼が統一教会と思われるカルト宗教にはまってしまい、大学に姿を見せなくなったという聞いた。まさかと思い、彼の住んでいるアパートの部屋に行ってみたが、すでに人の気配はなかった。当時は携帯電話が普及する前で、連絡をとる手段が全くなくなってしまった。
その後彼がどこでどういうふうに生きているかは知らない。願わくば、彼が元気でいることを願いたい。そしてできるだけ早い時期に統一教会と思われるカルト宗教から離れてほしい。カルト宗教に長くいればいるほど、彼が被害者だあるばかりではなく、加害者として、新たな信者を勧誘して洗脳したり、霊感商法に従事してしまう可能性が高くなる。それだけは友人として耐えられないことである。
統一教会は、1960年から今に至るまで、学生を中心とした若い人を引き込んで様々な活動に従事させる原理研究会の活動が問題視されてきた。他にも、霊感商法、合同結婚式、信者に高額の献金を強いるなど数々の問題を引き起こしてきた。それが許されてきたのは政界との癒着があったから。今回大きな事件があって統一教会の問題がクローズアップされたが、この機会にこれまで隠された問題が明らかになり、被害者の救済が進むことを期待したいし、もしA君が今でも統一教会に留まっているのだとすれば彼の人生の再出発を支援したいと思う。
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