あの夏、あの本、そして2023年
私が19歳のある夏の日、浪人中の私のもとに高校時代からの友人がやってきた。一緒に昼食を食べ、近況を報告し合い、帰り際に1冊の本を読むように私に勧めてくれた。暑い夏、勉強をするのもしんどいし、図書館に行けばエアコンが効いた部屋で勉強できるが、そこまでの道が暑いから、図書館に行くのはやめにして、畳に寝そべって彼が持ってきた本をパラパラと読んでみた。なになに、人類4億年の歴史だって、いきなり生物学の常識がひっくり返るな。4億年前なら古生代の石炭紀、人類は恐竜よりも古いんだ。そんなバナナ、もといそんな馬鹿な。もう、この時点でまともに読む気はなかったが、怖いもの見たさにページをめくると、愛や人生について書かれているが、その根本的な考え方は仏教にキリスト教などの考え方をミックスしたもので、仏教への関心が高かった私にとってはよくわからない何かとしか表現できないシロモノだった。
当時の友人は成功したいという気持ちが人一倍強く、自己啓発のために役に立つと考えこの本を購入し、浪人生活をしながら危機感が薄い(と彼には見えた)私にも勧めてきたのだろうと理解した。ただ彼は性急すぎるところがあるから、この著者の考えにハマったら困るなと思った。幸運なことに、友人のアパートの本棚にはこの著者の本が増えることはなく、後年彼が引っ越すときにおそらく驚くべき安価でたたき売られたものだろうと推測する。
最近耳にしたニュースを聞いて、19歳の夏の暑い日の思い出が蘇ってきた。ただそれだけの話である。
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