ここ最近、各地の路線バスで減便が進んでいる。そんなこと当たり前だろうと思う人もいるのかもしれない。地方の路線バスなんて、ろくに利用者がいないし、バスは遅いし大きいしクルマの通行に邪魔だから減便してくれるのは大歓迎と思う方もいるかもしれない。でもそういう問題ではない、今、静かにこの国で進行しつつある危機の一つなのかもしれない。そんな予感がある。
全国のバスの利用者数は1970年代以降減少を続けている。主な原因はモータリゼーションの進展で自家用車の利用が増えたことと、地方を中心とする人口の減少である。しかし、ここ最近は利用者の減少に歯止めがかかりつくある。モータリゼーションの進展が一段落したことと、高齢化や国際化が進んだことで、車の運転ができない人が増えたこと、人口の都市部への集中でクルマを持たない選択をする人が増えたためだろう。しかし、それでもバスの減便をする事業者は多い。私が住んでいる地域のバス事業者も朝の通勤通学時のバスの減便があったし、ドル箱のはずの高速バスでも減便があった。
利用者が見込める時間帯やドル箱の高速バスでも減便を強いられる最大の理由は運転手の人手不足だろう。バスの運転手は乗客の安全も、歩行者や他の車両に乗る人の安全も守らなければならない非常に責任の重い仕事である。しかし、その責任に比べて給料は安く、社会的な評価もそれほど高いとはいえない。そして、バスが遅れれば乗客からの苦情は来るし、バスの優先通行を無視して無理に追い越そうとするドライバーも多い。それではバスの運転手になりたがらない人も多くなるのは当然だろうと思う。
実はこの問題はバスだけではなく、様々な職種に及んでいる。タクシーの運転手も不足していて、地方ではなかなかタクシーが来てくれないという問題もあるし、トラックのドライバーも不足している。介護や保育に関わる人材も不足しているし、自動車整備士も公立学校の教師も不足している。最大の理由は低賃金や長い労働時間、顧客からのクレームなどで、「きつい仕事」、「割に合わない仕事」と思われていることだろう。そしてもうひとつの理由が人口の減少による働き手の不足だろう。
とはいえ、これらの仕事は無くなっていい仕事ではない。バスやタクシーの運転手が不足すれば、人の移動に大きな影響が出る。日本では高齢化が進み、免許返納をする人が今後増えるだろう。そうなった時バスやタクシーなどの移動手段が確保されていなければ困ってしまう。そうなれば無理に運転を続ける人が増え、それに伴い事故の増加という事態だって起こりうる。トラックのドライバーが不足すれば物流に支障をきたし、必要なものが必要な場所に届かないということだって起きてしまうかもしれない。介護や保育、教育に関しては言うまでもない。これらの仕事についている人の待遇を改善するとともに、AIなど業務の負担を減らす方策も活用すべきだと思う。また、バスについては、月に1度は利用して、バス事業者が適切な利益を上げ、運転手の給与を上げることができるようにしてほしい。また、片側1車線の道路ではバスの追い越しはできるだけしないで、定時運行に協力してほしい。無くなってしまってからでは取り返しがつかないものだから。
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