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カテゴリー「書籍・雑誌」の21件の記事

「野宿入門」 かとうちあき 草思社

 本を読むということはその本の著者の人柄に触れることだと思う。だから、人と人の愛称があるように人と本の愛称という者はある。そのあたりは最初の数ページを読めば何となくわかってくるものだ。この本の著者のかとうちあきさんは突き抜けた面白さがある人だと思う。

 「29歳、独身、女。風呂は、まだない」

 という言葉でこの本は始まる。この言葉だけで、「ああ、この人センスあるな」と感心した。かとうちあきさんは中学生の頃から野宿にあこがれ、高校生で野宿デビュー。友達と2人で東京から熱海へ徒歩旅行をして、途中の道路の側溝で寝たのが野宿の始まり、その後、大学生で本格的に野宿をして、大学卒業後は就職をせずに徒歩旅行で野宿をしながら、介護福祉士の仕事で最低限のお金を稼ぐ生活をする。後に「人生をより低迷させる旅コミ誌『野宿野郎』」の編集長になる。

 この本には野宿の実践的なコツが凝縮されている。段ボールや新聞紙の活用の仕方、安全な野宿場所、コンビニや警察官を味方にするためのコツなど。野宿のコツ、と思われる方もいるかもしれないが、私たちにとって野宿はそんなに縁遠いものなのか?そんなことはないと思う。大地震で家が倒壊して、避難所に行ったら満員御礼なんてことは地震が多く人口密度の高い日本ではあり得ることである。

 しかし、この本の魅力はそれだけではない。かとうちあきさんの生きざまそのものが面白い。常識にとらわれず、自分の思う道を突き進む生きざまは痛快である。法政大学社会学部を卒業したら、いい会社に就職することは難しくないし、そこでバリバリ働いたら風呂付のアパートどころか、ベイエリアの高層マンションに住むことだって難しくはないあろう。しかし、そんなことには目もくれず、わが道を行き、年収は100~300万円、余計なしがらみを持たず、自分の好きなことを人生の中心に据える生きざまはうらやましいし、読後にそう快感を覚える。かとうちあきさんは現在35歳、今でもどこかで野宿をしているのだろうか。

「機長の航跡」 諸星廣夫 イカロス出版

 1945年、太平洋戦争に敗れた日本は、民間航空を含むすべての航空活動を禁止された。1951年、日本航空が設立されて、民間航空が復活したが、この時点ではアメリカのノースウエスト航空(現在のデルタ航空)の乗務員による運行だった。翌年には日本人の乗務員が誕生するが、戦時中と戦後の空白期の間に、民間航空の技術は大きく進歩していた。当時の日本航空はアメリカの航空会社をお手本にする世界の片田舎の小さな航空会社だった。

 著者の諸星さんは1958年、片田舎の小さな航空会社から飛躍しようとしていた日本航空に入社、ダグラスDC-4型機の副操縦士になる。この機体は、日本航空の初期の主力機で、レシプロ(ピストン)エンジンを4機積んだプロペラ機で、、最高速度は350km/h,、定員64名、中には雨漏りもする機体もあったそうだが、当時としては世界の水準からやや遅れていたが、それでも戦災から復興した日本にとってはあこがれの存在だった。諸星さんはその後ダグラスDC-6という、やや大型化した国際線用のプロペラ機の機長、コンベア880という、操縦の難しいじゃじゃ馬的なジェット機、ダグラスDC-8という、国内線、国際線で広く活躍したジェット機、世界の空を変えた通称『ジャンボ』と呼ばれたボーイングB747,ジェットエンジンを3機積んだ特徴的なスタイルのマクドネルダグラスDC10の機長を歴任し、1991年に日本航空を定年退職した。この間、日本航空は世界有数の航空会社に成長した。戦後の日本が世界有数の経済大国になるのと歩調を合わせるかのように。

 諸星さんの文章は、徹底的に冷静で、自社の事故についても技術的な視点から分析している。また、その時代時代の日本航空が抱える問題について、自分の考えをもって仕事に当たっている。空の旅が好きな人にとって、パイロットというプロフェッショナルの仕事を知るためにも、戦後の航空史を知るためにも貴重な資料となる1冊だろう。

寝る前の楽しみ

 今の時刻は23時7分、そろそろ布団に入り、夢へのフライトに出発することです。寝る前の時間の楽しみが読書です。ネットで簡単に情報が入る時代、本を読む人が減って出版不況だと言われています。私も一時期本を良くとこが極端に減った時期もありましたが、ネットは情報を集める、本は感情を入れながらゆっくり読むという役割分担ができてきたように思います。読む本は小説はあまり多くなく、エッセイや紀行文、歴史書等が多いです。さて、わたしもそろそろPCの電源を落として布団に入って、夢へのフライトに出発するまでのつかの間読書を楽しむとしましょう。おやすみなさい。

「塀の中から見た人生」 安部譲二・山本譲司著 カナリア書房

 安部譲二、1937年東京都生まれ、中学校卒業後任侠の世界へ、そのかたわら、日本航空パーサー、キックボクシング解説者などをつとめた。任侠の世界から足を洗った後小説家に、「塀の中の懲りない面々」がミリオンセラーになった。一方、山本譲司、1962年北海道生まれ、市民運動での活動、菅直人(現財務大臣)の秘書を経て、東京都議会議員、衆議院に。名前が「じょうじ」であること以外あまり接点のなさそうな二人だが、意外な共通点がある。それは、二人とも元懲役、つまり罪を犯し刑務所に受刑者として収容されていたことのある人物なのである。

 この本の内容は、二人の刑務所での体験と、受刑者や刑務官との出来事に関しての対談。ベテランの懲役太郎である安部と、1回だけの短期の懲役(秘書給与流用)である山本は、もちろん経験した内容も全然違うが、私たちにはうかがい知れない塀の中の様子が面白かった。しかし、面白がってばかりいてはいられない。安部も山本も口を揃えて日本の刑務所が抱える深刻な問題をあげている。

 刑務所には犯罪を起こした者を懲らしめる機能、犯罪を犯した者を社会から隔離する機能、そして、犯罪を犯した者を更生させ社会復帰を促す機能があると思う。日本の刑務所はこのうちはじめの2つの機能についてはとてもよく機能しているが、最後の社会復帰を促す機能についてはまだまだであるそうだ。悪いことをした者は懲らしめて隔離すればそれでいいだろうと思う人もいるかもしれない。しかし安部も山本もそれは違うという。私もそう思う。日本には終身刑の制度もないし、懲役200年とかそんなむちゃくちゃな長期の懲役刑はない。死刑囚を除けばいずれ刑務所を出所して社会に戻っていくことになる。罪を償った人が胸を張って社会の中で生きていくこと、これは当然のことだと思う。そのための職業訓練や教育的な支援は絶対に必要だと思う。

「嫌われ松子の一生(上・下)」 山田宗樹 幻冬舎文庫

 人は誰でも愛を求め、幸せをつかもうともがきながら生きている。しかし、一度坂を転がり落ち始めると容易にそれを止めることは難しい。この小説の主人公の川尻松子は不器用だがまっすぐに人を愛したが、己の弱さと運命のいたずらによりとめどなく坂を転げ落ちてしまう。そんな彼女の23歳から53歳までの転落の物語。
 
 この作品は、2006年に中島哲也監督、中谷美紀主演で映画化され、同年に内山理名主演でTBSテレビかでドラマ化されたので、そちらで見たという方も多いと思う。私もテレビドラマ版は一部を見たことがあるが、昨年末に改めて小説版を読んでみた。
 この小説の主人公の川尻松子の弱さ、それは自分の意思を強く持てないところだと思う。猛勉強をしたのも自分のためではなく、両親の愛を自分につなぎとめるため、教師になったのもそう。学校を追われた後も、亡くなるまでの間に数人の男とかかわったが、男の愛をつなぎとめるために安易に覚せい剤に手を出したり、破滅型の男と一緒に破滅していくことになる。そして、人を見る目に欠けていた。松子を骨までしゃぶりつくそうとするヒモ男を見抜けず、骨までしゃぶりつくされる直前まで疑うことがなかった。土壇場でだまされることに気づくが、逆上した松子はヒモ男を殺害されてしまう。有罪判決を受け、刑務所に服役した松子は、刑務所で美容師の資格を取り、出所後は東京の美容室で働く。この時が松子の立ち直りのチャンスで、松子も一生懸命働くが、かつての教え子龍洋一と出会ったことをきっかけに松子の運命は再び暗転する。後に洋一にも裏切られた松子は、故郷の弟と妹にすがろうと思い帰郷するが、妹は既に亡くなって、弟からは冷たく追い返される。結局すがるものすべてを失った松子は、誰も信じず、誰も愛さず生きていくことになる。

 こう書いていくと松子は救いようのない人物に見えてくる。しかし、そんなことはないと思う。松子はやや極端かもしれないが、だれでも松子のような弱さを持っていると思う。少なくとも私はそうだと思う。松子の悲しさ、苦悩。そして時々小春日和のように訪れた穏やかで幸せな日々の喜び、それらのものがとてもよくわかる。幸せって何だろう。それを考えるのにとてもよい1冊。

ニューヨーク底辺物語 境セイキ著 扶桑社

 ニューヨークといえばどんなことを連想するだろうか。マンハッタンの高層ビル街、ブロードウエィのミュージカル、ウォールストリートの証券取引所、イーストサイドの国連本部。まだまだ出てきそうだ。文化、経済、政治において揺るぎない世界の中心地である。また、様々な肌の色の人種、様々な宗教、様々な文化が入り乱れる魅力あふれる都市だと思う。これまでもニューヨークを舞台とした旅行記やテレビのドキュメンタリー番組はよく見てきた。今回は少し変わった切り口で描かれているニューヨーク生活記を読んでみた。

 この著者は24歳でニューヨークに渡り、アパレル商社の社長になった。しかし、やがでドラッグにはまり、ビジネスも住居も失いホームレスになる。そこでであった様々な出身地で、様々な事情を抱えるホームレス達、そしてホームレスのハッスル(仕事)事情、意外に豊かな食事情、公衆電話の奇想天外の利用法。これまで読んだニューヨーク紀行にはない面白い視点の話が満載です。

「カーリング魂」 小野寺歩著 小学館

 2006年のトリノオリンピックは日本選手団にとって散々な大会だった。獲得したメダルは、フィギュアスケートの荒川静香の金メダル1つだけであった。日本のお家芸であるジャンプも散々だったし、期待していたスピードスケートのほうも惜しくもメダルに届かなかった。スノーボードにいたっては、一部の選手の選手村での態度の悪さが問題になるくらいで、競技以前の問題だった。
 そんな中検討したのが女子カーリングチームであった。オリンピックが始まる前には話題にもなっていなかったのだが、オリンピックが始まると、彼女達の奮闘する姿が多くの人に感動を与えた。強豪のカナダを破ったときには、「ひょっとしたらメダルに手が届くかも」と思った。結局メダルには届きませんでしたが、その姿には多くの人が拍手を送りました。
 現在は競技の第一線を退いた小野寺(現在は小笠原)が、カーリングとの出会い、そしてオリンピックまでの思い出を綴ったのがこの本です。カーリングの難しさは、他のどんなスポーツよりも固いチームワークが求められることだと思うが、このチーム「チーム青森」の5人の絆の強さはこ本からも読み取れる。チームのメンバーに対する思いを語った部分では、私は感激して涙を流しながら読んでいました。病院の待合室だと言うのに!

「スマイル プラネット」 三井昌志著 パロル舎

 1年ほど前、ある資料館に行ったときに、庭園を掃除していたおばさんが私を見て「人生いつかはいいことがありますよ、諦めないでください」と言いました。家に帰って鏡に向かっていろんな表情をしてみた。私はそんなに人生暗闇のような表情をしているのだろうか真剣に考えてみた。私の顔のつくりは悪い、どうみたって良くない、それでも表情さえよければ救いはあるが、表情さえも良くないと言う現実に直面した。まぁ私の顔のことなど誰も興味が無いと思うので、素晴らしい顔に出会いに行くと思います。
 この本の著者はアジアを中心に世界各地を旅して、底で取った写真を本にした。表紙写真のティーンエイジの女の子の素晴らしい表情に引き込まれるようにこの本を手に取った。この本はたくさんの素晴らしい顔の写真でできている。子どもだけじゃない、老人もいる。土にまみれて働く人もいる。肌の色が白い人もいれば、黒い人もいる。機関銃を抱えた兵士もいる。みんながみんな美男美女じゃない、でもとてもいい表情をしている。インクと紙でできている本から生きているというオーラが湧き出してくる。。いいなぁ、この表情。私もこの本を見ているうちに、少しだけこの人々のような表情ができるかもしれない、そんな気がしてきた。

「江戸アルキ帖」 杉浦日向子著 新潮文庫

 杉浦日向子さんは面白い人だ。私が彼女を知ったのはNHK総合の「コメディーお江戸でござる」の時代考証のコーナーであった。この人、こんなことまで知っているのだなぁと感心した。ひょっとしたらこの人、生まれてきた時代を間違えてしまったのではと思うほど江戸の町人の風俗に詳しかった。

 この本では、現代に住む女性がタイムトラベラーになって週に1度江戸時代にタイムとラベルをするという内容の本である。江戸の人々の生活を楽しい文章と絵で(杉浦さんはかつて漫画家をしていたから絵はお手の物である)私までが実際に江戸に旅に出たような気分になる楽しい本です。

 非常に惜しいことに杉浦さんは2005年7月にこの世を去った、まだ46歳であった。ひょっとしたら、大好きな江戸の町の住人になってしまったのかもしれない。江戸の長屋に住むおかみさん、ひょっとしたら杉浦さんかもしれません。

第62代横綱大乃国の全国スイーツ巡業 芝田山康著

 最近の若い男の子は違うのかもしれないが、私が男に生まれて損したなと思っていることは、人前でスイーツの話ができないことである。あの店のケーキは美味しかった、あの店のアイスクリームが・・・などという話はいい年をした男がするのはみっともない、そんな思い込みがあった。とは言え、決してスイーツが嫌いなわけではない。生クリームやカスタードクリームは昔のように食べられないが、レアチーズケーキは大好きだし、仕事から帰ったらまずすることは、ブラックのコーヒーか高山烏龍茶にクッキーで一息つくことだし、夏なら水まんじゅうが欲しくなる。だから、スイーツに興味の無い振りをするのは結構しんどかった。
 芝田山親方(元横綱大乃国)は角界きっての甘党。食べるだけでなく自分でケーキを作ってしまうほどのスイーツ通。そんな親方が日本全国のなかから厳選したおすすめのスイーツを紹介したのがこの本です。日本一美味しいバウムクーヘン、親方が惚れ込んだチーズケーキ、親方が素材の良さに納得したプリンなど、北は北海道から南は鹿児島まで日本各地の極上のスイーツが紹介されてみます。私もこの本を片手に全国スイーツ修行の旅に出発しようかな。   (2006年 日本経済新聞出版社発行)

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