「外交回想録」 重光葵(まもる)著 中公文庫
重光葵(1887〜1957)は第一次世界大戦前に外務省に入り、それ以降外交官として、ドイツ、イギリス、中国などに駐在した。本書は、ドイツなど同盟国とイギリスなどの連合国の緊張が高まった時代のドイツで外交官としてのキャリアを始めた。本書はベルリン着任のちょくぜんから記述が始まっている。それから、ドイツがポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が始まり、日米関係が緊迫した時期にロンドンから東京に戻った時点で本書の記述が終わっている。本書の中では、日本の外交官だけでなく、各国の外交官や政治家とのやり取り、その時代の人々に様子が冷静なタッチで描かれてある。
特に興味を引いたのは、日本が満州事変を起こして以降の記述で、中国の外交官と戦争を避けるために様々なルートで交渉を尽くした部分である。結果的に日本と中国の対立はエスカレートを重ね、重光ら外交官の努力は生かされなかった。今、また国際関係は緊迫している.私たち市民がどのような目で国際関係を見ればよいか、そのようなことを語りかけてくれる一冊である。
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