世の中にはかなり無理矢理理論構成をする人がいる、そしてそのような人の話を鵜呑みにしてしまう人がいる。需要と供給が一致しているのだからいいのではないかという気もするが、それではちゃんとした議論ができない、困ったものだ。
車が好きな人も、そうでない人も、バッテリー式電気自動車(BEV)に抵抗感を持っている人は多い。それ自体はとくに問題ではないし、国民の平均年齢が48歳で、世界平均の31歳と比べると大幅に高い。高齢化した日本では新しいものが受け入れられにくいのは自然な話だろう。
とはいえ、デタラメな話で人々を誘導するのは悪質な話だと思う。とあるところでこんな書き込みを目にした。「毎日自宅で充電するのと月に一度ガソリンスタンドに行くのと、どちらか負担が少ないか」というものであった。この人が言いたいことは、BEVは毎日充電しなければならないから面倒くさい、それに比べてガソリン車やハイブリッド車なら月に一度ガソリンスタンドに行くだけでいいから楽だということなのだろう。本当にそうなのだろうか?
まず、BEVの中で満充電での航続距離が短い車の中から日産・サクラを選ぼう。この車の航続距離カタログ値で180kmである。この車で毎日充電したとして、バッテリーの半分強は使わないと充電はしないから、1日の走行距離は100knくらいの想定だとしよう。同じ想定で、ガソリン車やハイブリッド車なら月に一度ガソリンスタンドに行けばいいそうだから、その車の満タンからの航続距離は3000kn以上ということになる。ちなみに、これだけの航続距離があれば、北海道の稚内から東京を経て、鹿児島県の枕崎まで無給油で走り切れる計算になる。(函館〜青森間はフェリーを利用)恐ろしい長距離走者だが本当だろうか?
次に航続距離3000kmについて検証しよう。燃費の良い車の代表として、トヨタ・プリウスを例にする。プリウスの燃費はグレードによって異なるが、30km/Lである。これで航続距離3000knを実現するには100L以上のガソリンタンクを必要とする。しかし、プリウスがそんなに大きなガソリンタンクを持っていると聞いたことはない。これが燃費15kn/Lのガソリン車なら200L以上のガソリンタンクだ。昨今のガソリンの高騰のおり、ガソリンタンクがほぼからの状態から満タンまで給油すると、およそ36,000円かかる。豪快、かつ、心臓に悪い車だ。
自分の嫌いなものを批判するのは良い、しかしそこには客観的な根拠は必要だろう。ネットの出現は誰でも発信して議論ができる素晴らしい場であるが、ぜひレベルの高い議論をしたいものだ。
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